『不死鳥の騎士団』(J・K・ローリング)の内容とは?

『不死鳥の騎士団』は、シリーズの中でもかなり息苦しい作品である。前作『炎のゴブレット』でヴォルデモートが復活したのに、魔法界の政府である魔法省は、それを認めようとしない。ハリーが嘘をついているのではないかと疑い、ダンブルドアまで信用しなくなる。

冒頭の「ダドリーの恐怖」では、ハリーと従兄のダドリーが吸魂鬼に襲われる。吸魂鬼とは、人間から幸福な記憶や生きる気力を奪う魔法生物である。ハリーは身を守るために魔法を使うが、未成年の魔法使用を禁じる規則に触れてしまい、魔法省から裁判にかけられる。

その後ハリーは、シリウス・ブラックの実家である「グリモールド・プレイス十二番地」へ連れていかれる。ここが「不死鳥の騎士団」の本部である。不死鳥の騎士団とは、ヴォルデモートとその手下である死喰い人たちと戦う秘密組織だ。シリウス、ルーピン、ムーディ、トンクス、キングズリーら、これまで登場した人物が再び集まっている。

ところがホグワーツに戻ると、今度は学校そのものが面倒なことになる。

魔法省から派遣されてきたドローレス・アンブリッジが「闇の魔術に対する防衛術」の教師になる。この人がとにかく嫌な教師である。実戦的な魔法を教えず、「教育令」を次々と出して生徒の活動を制限する。やがて「ホグワーツ高等尋問官」にまでなり、ダンブルドアの権限を削っていく。

目次にも「アンブリッジ教授」「ドローレスとの居残り」「ホグワーツ高等尋問官」「教育令第二十四号」と続いており、学校生活なのに、やっていることはほとんど統制である。

そこでハリー、ロン、ハーマイオニーたちは、実戦的な防衛術を自分たちで練習するため「ダンブルドア軍団」、略してD.A.を結成する。名前こそダンブルドア軍団だが、実態は生徒たちによる秘密の勉強会である。必要なときに必要な魔法を使えるよう、ハリーが先生役になって教えていく。

このあたりはかなり面白い。これまでのハリーは、事件に巻き込まれて戦うことが多かった。それが今回は、自分から仲間を集めて教える側になる。ネビルやルーナも加わり、最初は頼りなかった生徒たちが少しずつ強くなっていく。

一方で、ハリーには別の問題が起きている。ヴォルデモートとの精神的なつながりが強くなり、夢のような形で彼の視界を見てしまうのだ。そのためダンブルドアは、他人から精神を侵入されないための「閉心術」をスネイプに教えさせる。しかしハリーはスネイプとの相性が悪く、訓練もうまくいかない。

そして物語の後半、「神秘部」へ向かうことになる。

神秘部とは魔法省の中でも謎の多い部署で、時間、死、記憶、予言などについて研究している場所である。ハリーは、シリウスがヴォルデモートに捕らえられて拷問されているという幻視を見る。仲間たちは罠ではないかと疑うが、ハリーはシリウスを助けに行こうとする。

しかし、シリウスはそこにはいなかった。

待っていたのはルシウス・マルフォイら死喰い人たちだった。ハリーをここへ誘い出したのはヴォルデモートである。目的は、ハリーが自分自身の予言を保管したガラス球を取り出すことだった。

そして戦いになる。

ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニー、ネビル、ルーナたちは死喰い人たちと戦い、不死鳥の騎士団も駆けつける。しかし、ここでシリウスがベラトリックス・レストレンジに倒され、謎めいた「ベール」の向こうへ消えてしまう。

ハリーにとってシリウスは、父親に近い存在だった。そのシリウスが死ぬ。

しかもハリー自身が罠にかかってここまで来たこともあり、自分のせいではないかと苦しむ。前作のセドリックの死とは違い、今回は「自分を理解してくれる大人」を失うことになる。

その直後、ヴォルデモート本人が現れ、ダンブルドアと直接対決する。魔法省の大臣ファッジたちも現場を目撃し、ようやくヴォルデモートの復活を認めざるを得なくなる。

そして最後に、ダンブルドアがハリーへ重大な事実を説明する。

ハリーとヴォルデモートには予言によって結びつけられた運命があり、「どちらかがもう一方の手によって死ななければならない」という関係になっている。予言の有名な一節は「Neither can live while the other survives」、つまり「一方が生きているかぎり、もう一方は生きられない」という意味である。

ここで『不死鳥の騎士団』の結末がはっきりする。

もうヴォルデモートが帰ってくるかどうかを心配する段階ではない。ヴォルデモートは戻ってきており、魔法省もようやくそれを認めた。そしてハリーとヴォルデモートは、単なる敵同士ではなく、予言によって「どちらかがどちらかを倒さなければ終わらない」関係になっている。

さらに、ダンブルドアがハリーから距離を置いていた理由も明らかになる。ハリーとヴォルデモートの精神的なつながりを利用されることを恐れていたのだ。しかし、その配慮が結果的にハリーを孤立させ、罠にかかる原因にもなった。

『炎のゴブレット』で戦争が始まる予兆が見えたなら、『不死鳥の騎士団』では、それを認めたくない人間たちまで登場する。敵はヴォルデモートだけではなく、事実を認めようとしない魔法省、権力を振りかざすアンブリッジ、そして大人たちが情報を隠すことによって生じる混乱でもある。

そして最後に残るのは、シリウスの死と、ハリー自身が背負う予言である。

もう子供が学校で冒険しているだけの話ではない。ハリー自身が戦う側の人間になり、次の戦争が始まったことを確信させる一冊である。

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