『秘密の部屋』(J・K・ローリング)の内容とは?

『ハリー・ポッターと秘密の部屋』は、前作よりもずっと不気味な話になっている。ホグワーツという楽しい魔法学校に、明らかに「何か」が入り込んでいる。しかも、その正体を知ることができるのは、なぜかハリーだけ。声が聞こえる。誰もいない場所から声がする。そして、その声のあとには、生徒が次々と石のように動けなくなっていく。

物語は「最悪の誕生日」から始まる。夏休み、ダーズリー家で相変わらず邪魔者扱いされているハリーの前に、屋敷しもべ妖精のドビーが現れる。ドビーは「ホグワーツへ戻ってはいけない」と警告する。しかしハリーは当然ながら学校へ戻る。

このドビーというキャラクターが、最初からかなり面白い。ハリーを助けたいのに、その助け方がことごとく迷惑なのである。結果としてハリーは部屋に閉じ込められるが、ロンたちが空飛ぶ車で救出に来る。「巣穴」ことウィーズリー家での夏休みを経て、ハリーは再びホグワーツへ向かう。目次も「最悪の誕生日」「ドビーの警告」「巣穴」「ノクターン横丁」と進み、前作より明らかに怪しい雰囲気が漂っている。

そしてホグワーツに到着すると、妙な事件が起こり始める。

壁に血文字が現れ、「秘密の部屋」が開かれたことが告げられる。さらに生徒が次々に襲われ、石化してしまう。犯人は「スリザリンの継承者」なのではないか、と噂される。しかもハリーには、他の人間には聞こえない声が聞こえる。

「誰かが殺そうとしている……」

というような不穏な声を聞きながら、ハリーたちは事件を調べていく。

ここで登場するのが、今回の新しい教師ギルデロイ・ロックハート。自分の武勇伝を大量に書いた本を出版し、写真撮影やサイン会までやっている有名人だが、実際にはかなり怪しい。ハリーたちからすると、なぜこんな人間が闇の魔術に対する防衛術の教師なのか、という感じなのだが、読んでいる側にはむしろ「こういう奴がいるのも魔法界なんだな」と妙に納得させられる。

「決闘クラブ」「ポリジュース薬」「秘密の日記」と進むにつれて、事件の核心に近づいていく。ハリーたちはポリジュース薬を使ってドラコ・マルフォイから情報を聞き出そうとし、やがて古い日記を手に入れる。そこに記されていたのが、50年前のホグワーツで起きた事件だった。

そして「秘密の日記」が、この作品の最大の仕掛けになる。

日記の持ち主はトム・リドル。50年前のホグワーツの生徒であり、当時の「秘密の部屋」事件を解決した人物でもある。しかし実は、このトム・リドルこそ、後のヴォルデモートだった。

ここで前作とのつながりが一気に出てくる。

ヴォルデモートは単純に突然現れた悪の魔法使いではない。かつてホグワーツにいた一人の少年、トム・リドルだった。そして彼はスリザリンの血筋を受け継ぎ、純血主義に執着する。秘密の部屋を開き、中にいる巨大なバジリスクを操って、マグル生まれの生徒を排除しようとしていた。

しかも驚くのは、日記そのものがトム・リドルの意思を持っていることだ。ジニー・ウィーズリーは日記に操られ、本人の意思とは関係なく秘密の部屋を開いていた。

つまり今回の敵は「学校に侵入してきた怪物」ではなく、50年前の人物の意思が現在に蘇ってきたものだったのである。

そして「アラゴグ」「秘密の部屋」「スリザリンの継承者」と進み、ハリーはついに地下の秘密の部屋へ向かう。そこで待っているのが巨大なバジリスクと、若き日のトム・リドル。

この場面でかなり重要なのが、ハリー自身の正体についての疑問である。

ハリーは蛇語を話すことができる。スリザリンの継承者なのではないか、と疑われる。実際、ハリーとヴォルデモートには妙な共通点がある。二人とも孤児であり、蛇語を話し、特別な魔力を持ち、そしてヴォルデモートによって額に傷をつけられている。

「ハリー自身がスリザリンの継承者なのではないか?」

という疑いは、この物語のかなり面白いところだと思う。

しかし最後にダンブルドアの言葉が効いてくる。ハリーはスリザリンに選ばれた可能性もあった。それでも自分の意思でグリフィンドールを選んだ。つまり人間を決めるのは、生まれや能力だけではなく、自分が何を選ぶかでもある。

最終的にハリーは、グリフィンドールの剣と不死鳥フォークスの助けを借りてバジリスクを倒し、トム・リドルの日記を破壊する。ジニーも救われ、石化した生徒たちも元に戻る。そして最後には、ルシウス・マルフォイが日記をジニーに渡していたことが明らかになる。

ここでドビーの「ご褒美」にもつながる。ハリーはルシウスを利用してドビーを自由にする。最初はただの奇妙な妖精だったドビーが、最後にはハリーを助ける重要な存在になっている。

『賢者の石』が「ハリーが魔法界に自分の居場所を見つける話」だったとすれば、『秘密の部屋』は「自分が何者なのかを疑われる話」なのだと思う。

そして結末で確信できるのは、ヴォルデモートが過去の人物として終わっていないということだ。賢者の石では肉体を失った存在として現れ、今回は日記という形で過去の自分を蘇らせている。しかも、最後に破壊された日記は単なる古いノートではない。

ヴォルデモートはまだ終わっていない。

むしろ、この物語を読んだ時点で、「こいつはまた出てくるな」と分かるように作られている。そして次第に、ハリーとヴォルデモートは単なる主人公と悪役ではなく、かなり奇妙な因縁で結びついた存在なのだと分かってくる。

魔法学校の怪談から始まって、最後にはヴォルデモートの過去まで見せてしまう。子供向けの学園ファンタジーとして始まった話が、少しずつシリーズ全体の核心へ入り込んできた感じがする。これは次を読まないほうが難しい。

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